夕日の音色。
音楽室の窓から、柔らかく・・・優しく透けてくる夕焼けの陽光。
窓をのぞけば素晴らしい夕日を拝めそうだが、遠子(とおこ)はピアノのいすに腰掛けながら、音楽室のグランドピアノを愛しそうにゆるりと撫でていた。
誰も居ない音楽室は、何の音もしないが、それがまた遠子の耳にはうるさく聞こえる。
中指で、ミの音を叩いてみる。ポーンと静かに遠子の耳へと溶けて行くように消えた。
(あぁ、思い出す。佐野のこと、やっぱり憶えてる・・・・。)
胸へのわずかな痛み。恋と呼んでいいのか、哀愁と呼んでいいのか分からない、鋭くながらも自分を包み込む痛み。
(弾きたい、弾きたい。泣いたって構わない。)
いつのまにか遠子は曲を弾き始めていた。止まらない。
体全体でピアノの鍵盤に向かっているような感じだ。エネルギー全てをこの曲に込めようとしていたのだ。
ポロポロッと小粒の涙が、遠子の頬をすばやく伝った。しょっぱい味の涙が口へと入り込んできた。
それでも、手を止めようとはしない。せっかく走り出した曲を終わらせたく無かった。
音色は悲しかった。鍵盤を叩く指は必死に、壮大な音色を確かに響かせていた。
上手く、キレイに、なんてどうでもいい。ただ、弾く。佐野のためだけへの。
キィ・・・と初めてピアノの音色以外の擬態音が音楽室に表れた。
ビクッと遠子の体が震え、思わず演奏する手が止まった。
音楽室のドアが開く音。
それに続いて、ペタン、ペタンとゆっくりとした足音が遠子の方へ迫ってきた。
「え・・・あ、今のピアノ、お前だったんだ・・・・」
髪の毛は金髪で、鼻の頭にはいっぱいのそばかす。
学ランの裾からはカッターシャツがだらんと見えている男子が、本気で驚いてるのか、それとも演技で驚いてるのか分からないような表情を浮かべながら、穏やかに言った。
「織田…。」
遠子は何の表情も見せず、ただ織田の顔を見ていた。
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佐野って誰でしょう。
私にも分かりません。(大爆笑)
何かねー話思いついて、
その勢いに任せて書いたんだと思います。
多分佐野くんも何か大きな役目を負ってたんでしょうけど、
当の筆者がわすれちゃぁね。
多分ちょっとリメイクして続きかきますよー
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