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君の手








 この頃になって冷え込みがぐっと増してきた。
美奈はセーラー服に首をすぼめ、自分の手と手を重ね合わせて少しでも体を温めようとした。
玄関前で、彼氏を待つ。
幸せな時なんだけど、寒さだけはどうにもならない。
手と足の指の感触はとっくになくなっていた。
 あまりの遅さに、もう放っておいて帰ってやろうかと考えた時に丁度彼が来た。
「あーごめんっ。担任、なかなか帰してくれなくてねえ・・・・終いには俺の前で泣き出しちゃって。
慰めるのに大変だったんだぁ。説教長いじゃん、田波せんせー。」
朗らかに美奈に話しかけてくる太朗。未奈の彼氏。
 自分が寒空の下健気に太朗を待ってたとき、彼は暖房の効いた職員室にいたのだ。
職員室にいるわけが説教であろうとも、暖かい部屋にいられるなら随分ましだろう。
「あのねー、私、寒かったの。それも一人で待ってたんだよ。
話し相手もいない、寒い、コレがどれだけの苦痛かわかってんのっ?!」
「うんうんわかったよぉ。だから早く帰ろう。寒いし。」
 どこが分かってんだよ・・・と思いながら、彼の手に手を伸ばす美奈。
手が触れた瞬間、ビクッと太朗が小さく震えた。
「ひっ! 美奈の手冷たっ。おれ心臓麻痺するかと思ったじゃん。え、狙った?殺す気?」
「そうだよー。このうらみ晴らさずべきして生きて行けるか。寒くて玄関前で銅像になるかと思った。」
「じゃぁ銅像になったら名前何にする?」
「名前?」
「うん、考える人、みたいな。 あ、コレなんかいいんじゃない?忠犬ハチ公ならず、忠人美奈公。
 サブタイトルは愛する太朗をいつまでも待ち続けてます、って感じでさ。ふはは。彼氏冥利に尽きるねぇ」
 手をつなぎながらそんなどうでもいい事を話しているうちに、自分の手が暖かくなってることに気付いた。
まるで、太朗が分けてくれたように。
2人で共有する暖かさ。些細な事だけど、少し嬉しくなる。
 きっと彼をもっと好きになるだろう、と未奈は白い息を吐きながらふと思った。



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