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一生敵わない






「さらさらしてるなぁ」
 透子はいつも俺の髪を、目を細めながら撫でる。
俺はどうも気恥ずかしくて、いつもその手をはねのけようとするのだが、俺の手が触れる前に透子は手を下げる。
「男の髪がきれいやっても、別に意味無いやろ」
「汚いよりかきれいのがええやん」
ま、それは確かにそうや・・・と思わず納得してしまう自分がにくい。
「とりあえず、さわんな」
「嫌や、触る」
「さわんな、気色悪い」
「あ、っそ。ならごめん」
 俺も一応思春期で、男なのだ。
ほいほい髪を触られて何も思わないはずが無い。
ましてや、透子は結構な美人なのだ。
異性として、はっきりと意識してしまうことがたびたびある。
しかし透子は多分俺のことをそういう対象として意識はしてないだろう。
してるなら軽々しく髪なんて撫でれない。
「で、お前は何の用やねん。お前は3組やろが」
「そやった、きょうかしょ、国語のん貸して」
上に開いた右手を俺の前につきだしてふてぶてしく透子は言った。
「・・・一昨日貸したままのような気がせんでもない・・・・」
「あ、それ失くしてもうたみたい。あはは、すまん!」
男前に、豪快に笑う透子。
「何でや!もうちょっとしおらしく謝れよ!
それ以前に何で俺が教科書2冊以上持ってるって思うねん!」
「そうやな、うっかりしてたわ」
「早く見つけろよ、俺の教科書。明日授業あるから」
「ああ、うんうん。じゃあ今日のところは数学の教科書かして。忘れたわ」
「数学もかよ。
もうちょい、意識を高く持って生きろや」
「うんうん。もうええから、はよ貸してください、予鈴鳴ってまうから。」
あかん、こいつと本気でつきあってたら疲れる。
もうええわ、と言って数学の教科書を渡してやった。透子は、なにがもうええんよ、と首をかしげていた。
数学の教科書を手にして軽やかな足取りで教室の出口へかけていく透子。
髪は後ろでお団子に結っている。白くて細いうなじが何とも色気があった。
これからも透子には敵わないな、と直感的に感じた。


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