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 俺は珍しく、というか初めて授業をサボって、学校の裏庭の木の下で昼寝をしていた。薄青の空は霞がかっていて、俺の眠気を誘うばかりだ。背中が汚れそうだが、もうすぐ卒業だから構いやしない。俺はとりあえず授業をサボって昼寝したかったのだ。  メガネで屈折して入る光が眩しい。こんなに世界は緩やかだったのだろうか。 雲は泳ぎもせず、そよ風は木の葉を奏でるばかりだ。
「暇だよなぁ。」
誰も聞いていないと分かっているのに、不意と独り事が浮いて出た。
「背中痛くて寝れねぇよな、結局・・・。」
 授業をサボるのがこんなに詰まらないものとは思わなかった。俺の考えてる「さぼり」ってものとは全く違ったので、急に苦しくなってしまった。
「授業もどろうかな」
「アンタ何してんの?」
 あまりに突然に独り事への返答が帰ってきたので、俺は体を勢いよく起こした。背骨が軽くポキッと鳴った。
 声のする方を見ると、ロングの髪の毛でスカートを短くしてる女子が俺の2,3メートル前に立っていた。顔はよく見えない。
「誰、だ」
少しどもりつつ、問うた。
「・・・本気でいってるの?同じクラスじゃん。義永りな子。」
「あぁ、義永・・・・。ってお前今授業中だぞ!オイ!」
「は?あんたも授業中でしょ。ま、今自習中なんだけど。だから昼寝しようと思って。」
 ゆっくりと腕を前に出して、俺の座ってる辺りを人差し指で指した。
「そこ。私の指定席なんだけどさ・・・。どいてよ。」
「やだよ。此処は公共の場じゃい。役所を通せ。」
「同級生の名前も覚えてなかった奴に、偉そうにする権利なんてある訳ないでしょう。 ていうかそもそも其のメガネの度、合ってないんじゃないの?」
「あ、そうかも・・・。」
俺はメガネを外した。あまりレンズを拭かないので、指紋がかなり付いてる。見にくいはずだ。
「あっ。」
突然義永が声を上げたので、何だよ、と言った。
「金岡って、メガネ外したら薄いじゃん顔!!!薄!」
「人の顔を薄口呼ばわりするなよな。俺は醤油か。」
「だって、薄いんだもん。メガネしたらインパクトあるのに。」
「人の顔を形容するのにインパクトって使うなよ・・・。結構お前キツイな。ま、見た目もきつそうに見えるけど。」
「・・・シバくよ、かなおかくん。」
「あ、メガネ型の雲。」
俺は天を指差した。義永はその指に沿って空を仰ぐ。
どうしようもない焦燥感が胸をかきたて、何も聴こえなくなった。



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