オイシイ溜息


「ねぇねぇ、サチナちゃん。溜息ってお菓子にしたら美味しそうじゃない?」
 突然ミツコちゃんがそう言った。
ミツコちゃんはよく突拍子も無い事を言う。
私の母は「ひょうたんからこまって感じねー」とにこにこしながらミツコちゃんを形容する。
私はミツコちゃんのそういうところがだいすきでだいすきで、かわいいなって思う。
「どうして?溜息ってついたら不幸になっちゃうんでしょ?」
「だって、溜息は誰かの感情のかたまりなの。
とっても味が濃くて・・・うん、美味しそう。
クリーミィだよ」
 クリーミィ・・・確かにその単語がピッタリだと思う。
 私もこの前疲れたとき思わず「ふう」と溜息をついてしまったけど、確かに濃い空気が混じっていた。
「そもそも、ついたら不幸ってうそうそ!
おにーちゃんが教えてくれたけど、そういうのって、メイシンって言うんだよ」
 ぷぅ、と頬を膨らませながら、溜息について語るミツコちゃんは、とってもかわいい。
長い睫毛も、薄い眉毛も、つるつるしてる小さなお鼻も、かわいい。 私はいつも羨ましい。
 きっと、ミツコちゃんは溜息をついた事なんて無いんだろうなぁ。
だから溜息に憧れてるんだ。

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 サチナちゃんは、すごーく幸せそう。
よゆうがあるんだな、って思うの。
 いつも私の話をにこにこ笑いながら聞いてくれる。目で私をしっかり見ながら。
いつも話してばっかで、そわそわしてる私とは違う。
 サチナちゃんのお母さんもすごーくにこにこしてて、
私のこと
「おもしろいねー」って褒めてくれる。
いつも私をぶったり蹴ったりする私のお母さんとは大違いなの。
 お兄ちゃんは、「お母さんは病んでるんだよ」
と私に話をする。
「びょうきなの?入院しなくていいの?」
って聞くと、
お兄ちゃんは頼りなさげに、うーん、そういうんじゃないのだよ、ってまた話をする。
 とりあえずお母さんがとっても可哀相なじょうたい、っていうことだけは分かったから、
痛くても平気な顔をすることに決めた。
 でも、やっぱり痛いから、たまに一人で溜息ついちゃうんだよね。
ごめんねおかあさん。
それでね、その溜息ね、凄く苦いの。
誰かが生野菜をいれたの?ってくらいね。
 だから、今日はサチナちゃんに
「おいしい溜息」の話をしたよ。
  そうすると、少しだけ溜息をつくのが楽しくなるから。




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若干暗い感じですねー。
すこし解説すると、
ミツコちゃんはサチナちゃんからみると凄い恵まれてて、
でもサチナちゃんはミツコちゃんからみると凄く幸せそうで。
お互い羨ましいんですよねー結局。
なんじゃそりゃ。

藤太さん160ありがとーゴザイマス!
「溜息」がリクでしたが、こんなんで良かったのかなー、と少し心配です。




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